
「いざギタ」へようこそ! ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
今日もどうぞゆっくりしていってください。
ライブに出るようになると耳にする「対バン」という言葉。
いったいどういう意味なんでしょうか。
今回は、対バンの意味やメリット・デメリット、さらに、対バンのライブに出演する際に意識しておきたいポイントなどを解説します。
ぜひ、ライブ出演時のヒントにしていただけると幸いです。
対バンとは
「対バン」には、以下2つの意味があります。
1.複数のバンドが同じライブに出演すること(ライブの形式) 2.同じライブに出演するバンドのこと(バンドの代名詞) |
1つ目は「今度のライブは対バンだ」みたいな感じで使います。
2つ目は「今日の対バンは演奏がめちゃくちゃうまかったね」などと使います。
「対」という文字が入っていますが、別にバンド同士で対決するわけではないんです。
対バンの語源
日本語俗語辞典を見ると、「対バン」とは「一緒にライブをするバンドのこと」だと説明されています。
つまり「対バン」とは「対になるバンド」ということですね。
「対決するバンド」や「バンドの対決」の略だ、と説明しているサイトもありますが、私は日本俗語辞典の説を推したいと思います。
別に勝敗を競うわけではないので。
「対になる」という言葉からもわかるとおり、対バンは基本的に、そのライブにおける重要度が同じくらいのバンドを指します。
たとえば、あなたがワンマンライブをおこない、私を前座として招待してくれたとしましょう。
この場合、あなたと私は「対バン」とはみなされません。
ライブの主役はあなたであり、私はあくまでも「おまけ」として出演しているからです。
ライブハウスが対バンを採用する理由【顧客満足度の向上】
なぜライブハウスはわざわざ「対バン」形式のライブを主催するのでしょうか。
それは「顧客満足度を向上させるため」です。
顧客が満足すればするほどリピーターになってくれる可能性が高まり、結果としてライブハウスが儲かるというわけですね。
では、ライブハウスにとっての「顧客」とはいったい誰なのかを考えてみましょう。
【顧客1】観客
1つ目の顧客は、もちろん「ライブを観に来てくれるお客さま」です。
ライブハウスは、お客さまからチケット代やドリンク代をいただくことによって収益を得ていますからね。
よっぽどファンの多いアーティストでない場合、1つのバンドだけでたくさんのお客さまを集めるのは難しいものです。
よって、複数のバンドが集まってライブを開催することで、ライブハウスとしても、より多くの集客を見込めるのですね。
そして実は、ライブハウスにとっての「お客さん」は、もう1つあります。
それが「ライブをするアーティスト」、つまり私たち演奏者です。
【顧客2】出演アーティスト
なぜアーティストがライブハウスにとっての「お客さん」になるのでしょうか。
それは、多くの場合、ライブハウスは「チケットノルマ」を設定しているからです。
「チケットノルマ」とは、一定枚数のチケットをアーティスト側に買い取らせる仕組みのことです。
「最低限これだけのチケットは自分たちの力で売ってね」と、ライブハウス側がアーティストに営業ノルマを課しているイメージ。
チケットノルマを設けることで、ライブハウス側は、ライブに観客がぜんぜん来なくても赤字にならないようにしています。
そして、対バン形式にすることでより多くのアーティストを出演させられるので、結果としてチケットノルマを多く集めることができるのです。
私たち演者は、自分たちがライブハウスから「お客さん」だと思われていることを忘れてはいけません。
アーティストとしてライブに呼んでもらっている!と勘違いすると、大変なことになります。
事実、誘われたライブすべてに出演し、チケットノルマで大赤字になってしまったバンドもたくさんいます。
この記事を読んでくれているあなたには、そのような目に遭ってほしくありません。
よってここからは、アーティスト(あなた)にとっての、対バン形式でライブをするメリット・デメリットを解説します。
メリットとデメリットをしっかり考慮したうえで、出演するライブを選ぶようにしてください。
出演者にとっての対バンのメリット・デメリット
出演するアーティストにとって、対バン形式のライブにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
私は、インディーズレーベルに所属していた頃に、何度か事務所主催の対バン形式のライブに出演しました。
よってここからは、当時の体験談も踏まえて解説します。
それぞれ見ていきましょう。
メリット
出演者にとってのメリットは、主に以下の3つです。
【メリット1】新規ファン獲得のきっかけになる 【メリット2】ワンマンライブに比べてチケットノルマの金額を抑えやすい 【メリット3】他のバンドとの交流のきっかけになる |
それぞれ詳しく解説します。
【メリット1】新規ファン獲得のきっかけになる
対バンライブをするということは、自分以外の出演者を観に来るお客さまもたくさんいるということです。
よって、これまであなたのことを知らなかった人たちに、あなたの音楽を聞いてもらえます。
そのため、よいパフォーマンスをすれば、新規のファンを獲得できる可能性も高まります。
私も、明らかに女性歌手のファンだと思われるおじさまから「初めて聴いたけど、ええ演奏やったわ~」と言ってもらえて調子に乗ったことがあります。
偶然出逢った人たちにも演奏を聴いてもらえるという点で、対バン形式のライブは「ライブハウスでやる路上ライブ」みたいなイメージだと言えるかもしれません。
【メリット2】ワンマンライブに比べてチケットノルマの金額を抑えやすい
対バンライブでは、ワンマンライブよりもチケットノルマが少額になる傾向があります。
これは、複数の出演者でチケットノルマを分割するからです。
「チケットノルマ」というのは、【顧客2】出演アーティストで解説したとおり、ライブハウスが出演者に課す集客ノルマのこと。
ライブに出演するための費用が抑えられるので、とくに集客力があまりないアーティストにとってはメリットだといえるでしょう。
チケットノルマの額が抑えられる割には、比較的大きな会場で演奏できることが多いのもメリットです。
【メリット3】他のアーティストとの交流のきっかけになる
路上ライブや単独ライブとは違い、対バンライブでは複数のアーティストやバンドの演奏を聴けたり、交流したりできます。
音楽活動をするうえで、他のアーティストとのつながりをもつことはとても大切。
「この機材が便利!」といった話や「あのライブハウスは楽屋が汚い」といった話ができたり、場合によっては一緒にイベントを企画したりもできます。
デメリット
一方、アーティストにとってのデメリットは、以下の2つです。
【デメリット1】演奏時間が短い 【デメリット2】アウェーな雰囲気の中で演奏することになるかも |
【デメリット1】演奏できる時間が短い
複数の出演者がいるぶん、自分の演奏できる持ち時間は短くなります。
大抵の場合、15分~30分程度が目安となるでしょう。
そのため、セットリスト(曲順)やMCなどを綿密に練り上げておかなければ、時間切れになってしまう可能性があります。
「まぁぶっつけ本番でなんとかなるやろ!」みたいなノリで臨むと、高確率でどうにもならなくなってしまう。
これが、対バンライブのデメリットです。
【デメリット2】アウェーな雰囲気の中で演奏することになるかも
対バンライブでは、出演順が事前公開されていないケースがほとんど。
不親切だなぁとは思いつつ、できるだけ開演から終演までの長い間お客さんに滞在してもらいたいライブハウス側の事情を考慮すると、これは致し方なし。
そのため、最後の方に出演するアーティストを目当てにして来た観客は、興味がないアーティストの演奏を延々聴くことになります。
このときの会場の雰囲気は、なんともいえないどんより感に包まれます。
まぁウラを返せば「これまで興味を持ってくれていなかった人に知ってもらえるチャンスだぜ!」とも言えるんですが。
いずれにせよ、どうすれば自分に興味のない人の心を掴めるかを考えておく必要があります。
ここまで、出演するアーティスト側にとっての対バンのメリット・デメリットを解説しました。
ここからは少し視点を変えて、ライブを観に来るお客さまにとってのメリット・デメリットを考えてみましょう。
お客さまにとっての対バンのメリットデメリット
賢明なあなたならもうお気づきだと思うのですが、音楽活動を成功させるためには、お客さま起点のマーケティング思考が必要不可欠。
お客さま側のメリット・デメリットを知っておくことで、お客さまの視点をもつことができ、ライブの集客や音楽活動がうまく進むようになるはずです。
まずはメリットからいきましょう。
【メリット】いろんなアーティストを観られる
対バン形式のライブでは、いろんなアーティストがさまざまなジャンルの曲を演奏します。
よって、多種多彩な音楽に生で触れられるのは、対バンライブを観に行く大きなメリットです。
そのため、ワンマンライブよりもお得感があると言えるかもしれません。
お客さまにとってのメリットをアーティスト側の立場で活かすとすると、「他の出演者がやらなさそうなジャンルや雰囲気の曲を選曲する」というアイデアが考えられます。
たとえば、J-POP系のバンドが続くようなら、ファンクやブルースの曲を演奏するのもいいかもしれません。
私は、対バンライブの1曲目には、演歌を弾き語りすることが多かったです。
石川さゆりの「津軽海峡冬景色」っていう名曲があるんですが、まず誰ともかぶらないのでけっこうインパクトを残せました。
登場した1曲目でお客さまに「おっ!?」」と思ってもらえると、次の曲も聴いてもらいやすくなります。
【デメリット】お目当てのアーティストがいつ出演するのかわからない
お客さまにとってのデメリットは、何と言ってもこれです。
対バンライブでは出演順が公開されていないケースが多いため、ヘタすると1時間以上、興味がない出演者の曲を聴かされる羽目になります。
お気に入りのバンドをたった30分観るために2,000~3,000円払い、しかも延々と興味のないバンドの演奏を聴かされるんですから、テンションも下がるってもんです。
これをアーティスト側の立場で活用するならば、自虐的なMCを挟んでみるのもアリです。
私は、露骨に興味なさそうなオーラを出してるお客さまに「今が絶好のトイレタイムかもしれませんから、このチャンスを逃さないでください」的なことを言ってました。
10回に3回くらいの確率でややウケして、演奏しやすい雰囲気になりました。
10回中7回はスベって自爆する危険性もはらんでいるため、覚悟のある方だけ実践してみてください。
ここまでで、アーティストや観客にとってのメリット・デメリットを解説しました。
それぞれのメリデメを考慮して、ぜひあなたにとって有意義なライブを選んで出演するようにしてください。
続いて、具体的な対バンの進み方を解説します。
対バンライブ当日についてよくある質問
対バン形式のライブは、どんな感じで進行するのでしょうか。
だいたいの流れがわかれば、何となく心の準備もできるってもんです。
【質問1】対バンライブってどんなふうに進行するの?
対バンライブ当日は、基本的に以下のような流れで進行します。
1.入り時間【リハーサルの30分前くらい】
入り時間とは、出演者がライブハウスに入る時間のこと。
「会場入り」と言わずに「入り」って略すあたり、いかにも業界用語っぽい感じですよね。
リハーサルの順番に応じて、入り時間も変わります。
入り時間に遅れてしまうと、最悪の場合、リハーサルができなくてぶっつけ本番!みたいな事態になりかねません。
そうでなくても、ライブハウスのスタッフさんや他の出演者に迷惑をかけてしまうので、時間厳守でいきましょう。
逆に、入りが早すぎてもライブハウス側が「まだ準備できてないんですけど!」的な感じで迷惑になる場合があるので、時間通りに到着するようにしましょう。
オススメとしては、入り時間の1時間前くらいにライブハウスの最寄り駅に着いておくことです。
入り時間まではブラブラ散歩するなりカフェに入るなどして、良い感じに時間を潰しておくとよいでしょう。
2.リハーサル【ライブ当日のお昼~夕方】
リハーサルは、ライブ本番でどんな感じで照明を当ててもらうのか、どんな感じで音を出してもらうのかなどを確認するためにおこないます。
リハーサルでバンド内での打ち合わせをしたり曲の練習をしたりすると、ライブハウスのスタッフさんからガチで嫌がられます。
お客さまにいい演奏を届けるために、ライブハウスのスタッフさんとコミュニケーションを取りながら調整していくという意識が必要です。
3.OPEN(開場)・START(開演)
OPENは、ライブ会場が開いてお客さまが入場し始めること。
STARTは、1組目の出演者が演奏し始めることです。
場内アナウンスなどもとくになく、照明が落ちた状態のまま1組目の出演者がセッティングを開始し、準備が整うといきなり演奏が始まります。
さっきまで暗かったライブハウスが照明で照らされる光景は、何度見ても鳥肌が立つくらいワクワクするもんです。
4.演奏
対バンライブでは、複数のバンドが同時にステージで演奏することはありません。
各出演者が、割り当てられた順番で演奏しては退場し、演奏しては退場してを繰り返していきます。
自分の演奏順だけでなく、何分間演奏できるのかもしっかり把握しておきましょう。
5.転換
「転換」とは、演奏が終わった出演者と次に演奏する出演者がステージ上で入れ替わること。
大抵、10分くらい時間が設けられています。
演奏が終わった出演者が機材を元に戻すと同時に、次に演奏する出演者は機材のセッティングやサウンドの最終チェックなどをします。
エフェクターはエフェクトボードを使ってまとめておくなど、スムーズに転換できるような準備をしておきましょう。
6.アンコール
アンコールは、ない場合も多いです。
アンコールがある場合は、たいてい最後に演奏したアーティストが演奏します。
なので、アンコールのあるライブでは、出演者の中で一番人気のあるアーティストが最後に演奏することが多いです。
7.終了時刻
アンコールを含む全演奏が終了すると、対バンライブは終了です。
ライブハウスの照明が明るくなり、お客さまは順次退場していきます。
8.完パケ
「完パケ」とは、全バンドがライブハウスから撤収すること。
完全に捌ける(ハケる)から、完パケです。
完パケの時間にはライブハウスから出ていられるよう、演奏終了後は早めに後片付けを済ませておきましょう。
あまりにもダラダラしていると、ライブハウスのスタッフさんから怒られてしまいます。
【質問2】出演順はどうやって決まってるの?
対バンの出演順って、どうやって決まっているのでしょうか。
大きく以下3つの要因で決まっていることが多いようです。
1.セッティング効率の都合 2.出演者のパフォーマンスの都合 3.出演者ののっぴきならない事情 |
1.セッティングの都合
弾き語り形式だったりバンド形式だったり、出演者はそれぞれ使用する楽器や機材が異なるため、セッティングに必要な時間も違います。
先ほど説明したように10分ほどの転換時間の中で機材の入替などをする必要があるため、効率的にセッティングができるように出演順を決めている場合があります。
2.出演者の人気度の都合
ライブハウスはたいてい、人気のあるバンドを最後の方に出演させます。
人気のあるバンドをライブの最初に出演させてしまうと、観客が「なんかこの対バンライブ、最初は盛り上がったけど、だんだん盛り下がっていくね」と感じてしまいそうですよね。
もしかしたら、最初のバンドだけで満足し、お客さまが一気に帰ってしまうことすらあるかもしれません。
こうなるともう、後半に出演するバンドは寂しいもの。
そんな事態を防ぐために、人気バンドの出演順は、最後の方に回されることがほとんどです。
3.出演者ののっぴきならない事情
出演者によっては、仕事が終わってからライブハウスに向かう人や、家庭の都合で早めに帰る必要がある人がいます。
こうした事情によって、出演順が決まる場合があります。
また、18歳未満のメンバーがいるバンドについては、早めに帰宅できるよう出演順が早めに設定される場合もあります。
ここで挙げたのはあくまでも主要な要因で、実際には他の要因が関係していたり、複数の要因が関係していたりする場合があります。
たとえあなたの出演順が1番だったとしても、「あなたの演奏は一番盛り上がらなさそうだから1番最初になりました」という意味ではないので、落ち込む必要はありません。
【質問3】タイムテーブルってなんで非公開なの?
当日の出演順を「タイムテーブル」といいます。
このタイムテーブルは、たいていの場合、非公開になっています。
出演者名とOPEN時間・START時間しか公開されていない場合がほとんどです。
TwitterやInstagramなどのSNSでライブ告知をする際にも、詳細な出演時間を公開するのはNGの場合があるため、注意が必要です。
なぜタイムテーブルが非公開なのかというと、ライブハウス側はお客さまにできるだけ長くライブハウスにいてほしいからです。
観客の立場で考えると、目当てのバンドがいつ出演するかわからない場合、見過ごしたくないので、ライブ開始からライブハウスに行きたくなりますよね。
ライブハウス的には、お客さんに長くいてもらえると、ドリンクが売れやすくなって売上が増えるかもしれません。
何より、ライブ全体の雰囲気が盛り上がるので、お客さま・出演者ともに満足度が高くなります。
対バンライブに出演する際のポイント
では最後に、対バンライブへの出演が決まったあなたに知っておいてほしいポイントを紹介します。
【ポイント1】コミュニケーションをしっかり!
ライブハウスのスタッフさんや、他の出演者さんとは、この先も長いお付き合いになるかもしれません。
あいさつをしっかりしたり、丁寧に接したりといった、気持ちよくコミュニケーションをとるための心遣いを忘れないようにしましょう。
良好な人間関係を築ける人であれば、奏でる音楽もきっと良質なものになるはず。
【ポイント2】機材はスッキリまとめて!
リハーサルや転換がスムーズにできるよう、機材はスッキリまとめておきましょう。
エフェクター類はごちゃつきやすいので、エフェクトボードに収納しておくのがオススメです。
当日にバタつくと、時間がかかってしまうだけでなく、忘れ物の原因になることもあります。
念入りに事前準備しておきましょう。
【ポイント3】当日の予定を立てて!
リハーサルや本番演奏が長引くと、あなたの後に演奏する出演者のスケジュールが狂い、みんなに迷惑をかけてしまいます。
機材の準備やMCに必要な時間を計算し、当日のイメージトレーニングをしておきましょう。
【ポイント4】ライブ全体を盛り上げるつもりで!
対バンのライブは、出演者とライブハウスのスタッフ全員で協力して盛り上げるイベントです。
自分の演奏を頑張るだけでなく、ライブ全体が楽しい雰囲気になるよう、創意工夫をしてみましょう。
ライブ全体を盛り上げることに成功すれば、きっとあなたのアーティストとしての総合力はグンと上がるはずです。
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