ブルースの意味・歴史・特徴、代表的なアーティストを解説します。

「いざギタ」へようこそ!
今日もどうぞゆっくりしていってください。

※当サイトでは、オススメ商品を紹介する際にアフィリエイト広告を利用しています。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ギターを練習していると、なんとなく「ブルースを練習しよう」とか「ブルースのコード進行でアドリブを弾こう」的なことを耳にすることがあるかと思います。

なんでブルースを練習させられるんでしょうか。
そもそもブルースって何なんでしょうか。

今回は、ブルースというジャンルについてお話したいと思います。

ブルースの意味

まずは「ブルース」という言葉の意味から解説します。
賢明なあなたはもしかしたら「言葉の意味なんて理解したところで何なるんだ?」とお思いかもしれません。
その気持ちはよくわかります。

でも実は「ブルース」という音楽ジャンルについて知るうえで、言葉の意味を理解することは非常に重要なんです。
きっと、ブルースに対する興味がより強くなるはずですよ。
しばらくお付き合いください。

語源

ブルースって、英語で書くと「blues」です。
ブルーな気持ち、つまり「何かを憂う気持ち」を歌ったものなんですね。

「憂い」を辞書で調べると、以下のような説明がなされています。

思うようにならなくて、つらい。せつない。憂鬱だ。

日本のブルースバンドの草分け的なバンドに「憂歌団」というグループがあります。
彼らのバンド名は、ブルース(=「憂」いの「歌」)を演奏するバンド(=「団」)という意味。
まさに「ブルースを演奏するバンド」という意味の込められたバンド名ですね。

▼憂歌団の代表曲『嫌んなった』

ダミ声のボーカルに、乾いたアコギの音色が絡みつく、泥臭くてクセになるナンバーです。

なんのために歌ったのか

では、いったいなぜ、「つらくてせつなくて憂鬱な」気分を歌にしたのでしょうか。
せっかく歌うなら、明るい内容を歌った方がよさそうなのに。

実はブルースは、アフリカ大陸からアメリカに連れてこられて働かされていた黒人奴隷やその子孫たちが、つらい現実を歌にしたものが起源なんです。
つらい現実を憂いながら、働くためのかけ声として歌っていたんですね。

日本にも、ブルースというわけではないですが、働く際のかけ声にする「労働歌」っていうのは存在します。

有名なところでいうと「ソーラン節」とか。

ソーラン節は、ニシン漁の際に漁師が歌った「沖揚げ音頭」がもとになっています。
網にかかったニシンを引き揚げる際に「ソーラン、ソーラン」とかけ声をかけていた。
単調で辛い肉体労働をこなすには、大勢で掛け声を唱和する必要があった。

労働の士気を高めるためのかけ声みたいな感じで歌われていました。

でも、日本の労働歌とブルースとで決定的に違うのは「そこで働くことに自由意思があったか否か」。

ソーラン節を歌ったニシン漁師は、漁が終わると地元に帰る「出稼ぎ」の漁師です。
強制的に異国の地に連れられて働かされる奴隷とは、状況が大きく違います。
そのため、ソーラン節などの「労働歌」と、今回テーマにしている「ブルース」とを同列に語ることはできません。
ここに、ブルースという音楽ジャンルの特異性があります。

では続いて、ブルースが生まれ、発展してきた歴史を紐解いていきましょう。

ブルースの歴史

先ほども触れたように、ブルースの歴史を見ていくには「奴隷制度」の存在を無視できません。
根深い問題であるため完全に語り尽くすことは不可能ですが、私の理解できている範囲で、できるだけわかりやすく解説します。

1.奴隷制度とブルース

奴隷制度が存在していたのは、1640年代から1865年までだと言われています。
1865年は、アメリカ合衆国憲法によって奴隷制が廃止された年です。

奴隷制度は「三角貿易」と呼ばれる仕組みに則って実行されていました。
三角貿易という呼び名は、地図上でちょうど三角形を描くようにやりとりがおこなわれていたことに由来します。
やりとりの流れは、以下のとおり。

  • イギリス→アフリカ・・・繊維製品・ラム酒・武器
  • アフリカ→アメリカ・・・奴隷
  • アメリカ→イギリス・・・砂糖・綿

三角貿易の流れ

三角貿易が始まった理由は、イギリスをはじめとするヨーロッパで「喫茶」の習慣が流行したことです。
「喫茶」というのは、紅茶を飲むことで、今でいう「アフタヌーンティー」ですね。

17世紀から18世紀にかけて喫茶の習慣が広まったことで、ヨーロッパでは砂糖の需要が高まりました。
で、砂糖の生産地であるアメリカやブラジルで労働力が必要となり、その労働力として「奴隷」が使われたというわけです。

アフリカから連れてこられた奴隷は、砂糖を作らされる以外に、綿花の農場で働かされた方々もいました。
この綿花はイギリスの織物工場へ輸出され、産業革命の基盤となったとされています。

奴隷制について、こちらの動画がわかりやすくまとまっていました。
ブルースに込められた思いを知るうえで、見ておいていただきたい動画です。

ブルースのルーツは「ワークソング」「フィールドハラー」「黒人霊歌」

奴隷として異国の地に連れてこられて、過酷な状況で働かされたアフリカの方々。
移動中の船も過酷なもので、死者も多数出たといいます。
彼らはそのような過酷な環境の中で、故郷のことを思い、命をつなぐために「歌」を歌いました。

ブルースのルーツとなった「歌」には、以下の3種類があります。

1.ワークソング
労働時のかけ声のような感じで歌ったもの。
大勢での作業時にリズムをとり、気分を高めるために歌ったとされています。

2.フィールドハラー
各人が離れた場所で働く際に歌ったもの。
決まったリズムはなく、誰かが思いつくままに歌い、別の誰かが応えるように別のフレーズを歌ったとされています。

3.黒人霊歌
アメリカでキリスト教に出会った奴隷が、独自のスタイルでつくりあげた歌唱スタイルです。
キリスト教の古い讃美歌がベースになっています。

ちなみに、これら3つに共通するのが「コール&レスポンス」という概念です。
つまり「誰かが歌ったフレーズに対して、誰か(もしくはみんな)が応える」という形態を取っていました。
今でも、ライブとかで「コール&レスポンス」ってよく聞きますよね。

2.奴隷解放とブルース

1865年にアメリカ合衆国憲法が制定され、奴隷制度は廃止されました。
ところが、制度的には奴隷から解放されても、アフリカから連れてこられた方々がアメリカで経済的に自立するのは難しいことでした。
彼らの多くは、シェアクロッパー(土地や用具を借りて耕作し、一定割合の収穫物を地主に収める小作人)として働くことになりました。

シェアクロッパーとして働く彼らは、収穫の半分ほどを地主に収めるだけでなく、土地や用具などのレンタル料を支払う必要もありました。
そのため、身分的には解放されたものの、貧困から抜け出すのは、事実上不可能に近いものでした。

ただ、奴隷として働かされていた時代に比べ、決定的に変わったこともありました。
それが「余暇時間」ができたという変化です。

奴隷として働かされていた頃には、身体の自由も時間の自由も、あらゆる自由が奪われていました。
しかし、シェアクロッパーとして働くようになると、金銭面での制約はあるものの、身体と時間の自由は得られるようになったのです。

この変化によって、集団で歌うものだった彼らの「歌」は、個人で歌うものに変化していきます。
歌詞の内容が個人的な感情を歌ったものに変化したり、ギターによる弾き語りのスタイルで歌われるようになったりしたのです。
これが、ブルースの始まりだと言われています。

3.TVの普及とブルース

1940年代に入り、アメリカで徐々にTVが普及し始めました。
経済的に余裕のあるアメリカ人たちがTVを視るようになり、それまでメディアの中心だったラジオが、徐々に影響力を弱めていきます。

ラジオの番組にポツポツと空き枠が生まれるようになり、そこで放送されたのが、ブルースを紹介する番組だったのです。
アフリカンアメリカンの人々だけの音楽だったブルースが、少しずつアメリカ国内で流れるようになっていきます。

この結果、それまでブルースに触れる機会のなかった白人の耳にもブルースが届くようになり、ブルースが広まっていくことになったのです。

年代別の代表的なアーティストと代表曲

ブルースは、実は登場した年代ごとに様々なカテゴリに分かれています。
さらりと解説します。

カントリー・ブルース(19世紀後半〜1940年代)

カントリー、つまり地域性が色濃く反映されているブルースです。
カントリーブルースは、登場した地域によってさらに3つに分けられます。

デルタブルース

ミシシッピ川流域などのデルタ地帯で登場したブルースです。
アフリカ民族色の強い、ソウルフルな歌い方や曲調が特徴的。

▼代表的なアーティスト
チャーリー・パットン

ロバート・ジョンソン

サン・ハウス

テキサスブルース

テキサス地方で登場したブルースです。
歌とギターによる「コール&レスポンス」がはっきりしているのが特徴的。

▼代表的なアーティスト
ブラインド・レモン・ジェファーソン

テキサス・アレキサンダー

ライトニン・ホプキンス

イーストコースト・ブルース

ボストンやニューヨークの付近で登場したブルースです。
軽快でポップな曲調が多く、聞きやすい印象なのが特徴的。

▼代表的なアーティスト
ブラインド・ウィリー・マクテル

ブラインド・ブレイク

ブラインド・ボーイ・フラー

シティ・ブルース(1920~40年代)

仕事を求めてアメリカ北部にやってきたアフリカンアメリカンの方々によって生み出されたブルースです。
白人音楽の影響を取り入れたスタイルで、ギターだけでなくピアノの伴奏が登場するのも特徴的。

▼代表的なアーティスト
ビッグ・ビル・ブルーンジー

ビッグ・メイシオ・メリウェザー

アーバン・ブルース(1940〜50年代)

ブルースにエレキギターが登場します。
ジャズバンドと一緒に演奏するようなスタイルで、都会的な印象。

▼代表的なアーティスト
T・ボーン・ウォーカー

シカゴブルース(1950年代初頭〜)

エレキ化したブルースは、よりラウドなバンドスタイルへと進化していきます。
この頃から、ロックとの関連性を色濃く感じられるようになります。

▼代表的なアーティスト
マディ・ウォターズ

ハウリン・ウルフ

モダン・ブルース(1960年代~)

より近代的な印象のブルースです。
ロックやポップスとの関連性も強く感じられ、聞きやすいのが特徴的。
代表的なアーティストがいずれも「キング」という名前なのも、なんかアイコニックですよね。

▼代表的なアーティスト
B.B.キング

アルバート・キング

フレディ・キング

ブルースの特徴

ここまで、ブルースの歴史や種類について解説しました。
ここでは、主に音楽手法の観点から、ブルースの特徴を見ていきましょう。

【特徴1】12小節で1コーラス

ブルースには、雛形というか、基本的な型があります。
川柳の「五・七・五」みたいな感じですね。

最も有名な例でいうと、以下のようなコード進行で進んでいきます。

1度→1度→1度→1度→4度→4度→1度→1度→5度→4度→1度→1度

この定型のうえに、色んな歌詞やメロディーを乗せているわけですね。

ちなみに、後半の「5度から4度」というコードの流れは、クラシック等の西洋音楽ではNGとされています。
このあたりにも、ブルースの特異性を感じますよね。

【特徴2】シャッフルのリズム

「タカタ、タカタ、タカタ、タカタ」という、跳ねたリズムです。
三連符が繰り返されているようなイメージなので、トリプレット(トリプル的な)と表現されたりもします。
これも、クラシックにはない要素。

【特徴3】ブルーノート

ブルーノートというのは、3度、5度、7度を半音下げた音程のこと。
「3度」「5度」「7度」の音を、ドから始まる音階の場合を例にして考えてみましょう。

  • 1度・・・ド
  • 2度・・・レ
  • 3度・・・
  • 4度・・・ファ
  • 5度・・・
  • 6度・・・ラ
  • 7度・・・

よって、ブルーノートは以下の音となります。
ミ♭ソ♭シ♭

分かりやすくいうと、通常の音階では「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド~♪」と演奏するところ、ブルーノートを使うと「ド、レ、ミ♭、ファ、ソ♭、ラ、シ♭、ド~♪」と演奏する、というイメージ。

以下のフレーズを聞いてみてください。

まずは普通の音階で弾いたフレーズ。

ド→ミ→ド→ソ→ファ→ミ→ド→ソ→シ→ド

 

これにブルーノートを使うと、以下のようになります。

ド→ミ♭→ド→ソ♭→ファ→ミ♭→ド→ソ♭→シ♭→ド

 

だいぶ印象が違いますよね。
ブルーノートで弾いたフレーズの方が渋い感じがします。

【特徴4】ペンタトニックスケール

「ペンタトニックスケール」とは、5つの音で構成されるスケールのことです。
ペンタっていうのは「5」っていう意味です(五角形のことを「ペンタゴン」って言いますよね)。

たとえば、みんな大好きマイナーペンタトニックスケール。
マイナースケールから2度と6度の音を省略し、5音で構成されるスケールです。

【特徴5】クオーターチョーキング

クオーターチョーキングとは、ギターの弦を微妙にチョーキングする演奏テクニックです。
クオーターは「4分の1」という意味なので、4分の1だけチョーキングする、っていうことですね。

ちょっとイメージしづらいので、具体例を挙げて説明します。

「ド」から「レ」までチョーキングすると「1音チョーキング」です。
「ド」から「ド#(レ♭)」までチューキングすると、「半音チョーキング」。
クオーターチョーキングでは、半音チョーキングより少しチョーキングを弱めて「ド」と「ド#(レ♭)」の間の音を出します。

この「『ド』と『ド#(レ♭)』の間の音」は、五線譜上に表現できない音程で、ピアノやオルガンなどの鍵盤で音程が定まっている楽器では出せません。
より人間の声に近い、生々しいニュアンスが特徴的です。

【特徴6】ボトルネック奏法

「スライドギター」とも呼ばれる奏法です。
ビール瓶の首部分を切り落とし、指にはめて使ったことから、「ボトルネック」と呼ばれています。
クオーターチョーキングと同じように、フレットとフレットの間にある微妙な音程が出せるテクニックです。
と同時に、何か叫び声のようなニュアンスも出せて、よりエモーショナルな音を出すことができます。

なぜ「ブルースが基本」と言われるのか

最後に、ギターを練習するうえでなぜ「ブルースが基本」と言われるのかを、私なりに考えてみたいと思います。

【理由1】リズムや奏法が後世のジャンルに影響を与えているから

めちゃくちゃざっくり言うと、ブルースのテンポを速くしてビートを強めたものがロックです。
ペンタトニックスケールだってクオーターチョーキングだって、ロックギターに不可欠な要素。
シャッフルの跳ねたリズムは、ファンクやジャズにも影響を与えています。
このようにブルースは、音楽的な要素で後世のさまざまなジャンルに影響を与えています。

【理由2】個人的な内容を歌う音楽の(たぶん)元祖だから

ブルースの歌詞は、個人的なできごとや感情がメインです。
個人的な内容を歌うのって今では当たり前のことですが、ブルースがなかったら生まれなかった文化なんじゃないかと思います。

クラシック音楽って、そもそも歌詞がないですよね。

中世ヨーロッパには「吟遊詩人」と呼ばれる人たちがいましたが、彼らがメインで歌っていたのは歴史上の出来事だったり、「理想的な愛とはなんぞや」みたいな、みんなに共通している内容でした。
(実際私は中世ヨーロッパを生きたことがないので知りませんが、そのように言われています)

もう少し時代が下ってゴスペルとかが出てくるんですが、内容としては賛美歌的なやつ。

なので「個人的な内容を歌にして、さらにそれを色んな人に聞かせる」っていう文化は、ブルースから生まれたと言えるんじゃないかと。
ブルースが現代音楽の基本とされる理由は、ここにもあるんじゃないかと思います。

ブルースは深掘りすればするほど発見がある

この記事では、ブルースの歴史や代表的なアーティスト、後世の音楽ジャンルに与えた影響についてご説明しました。
まだまだ全然説明不足ですし、私自身も全然理解不足な部分があるのですが、ブルースのことを知るうえで少しでもお役に立てればうれしいです。
せっかくギターを練習するのであれば、ブルースをどんどん深掘りして、より深く音楽を楽しんじゃいましょう。